イタリアで働くということ、給与や失業率についても
何故イタリアで働くのか?
「自分の美術修復技術を芸術の本場、イタリアで試してみたい!」、などの立派な目的がある方もいるでしょう。
一方で「イタリアが好きだから」、「イタリアにもっと居たいから」、そんな単純な理由でイタリアで就職するのも、実力、経済力が許せばアリだと思います。
でもやはり楽しいことばかりでないのが、イタリアでの就職。
このページでは、日伊両方の国で働いた・働く私が、外国人がイタリアで働くとはどういうことなのか、お給料は、などについて、まとめています。
給与の割りには物価が高く、日々の生活が大変
外国人がイタリアで働く為には、幾ら実力、才能がある人でも、大変な労力、時間、お金が掛かります。
時間、お金が掛かる理由については、次ページ、イタリアで就職する為に求められるもの、にも記載します。
また運良く現地での就職が決まったとしても、実際に受け取る給料は、職種にも拠りますが、通常は日本のそれに比べると少ないものです。
イタリアの新聞 Repubblica 2014/09/13の記事に拠ると、イタリア人の平均給与は、手取りで1327€、2015年1月のレートで約20万円弱とのこと。
ちなみにこの数字は、働く全年代の平均給与ですので、新入社員からリタイア直前の(場合に拠っては)役職付きの社員まで含めたところの平均値であり、言うまでも無く、入社直後の平均給与というのは、1327€よりも低くなるでしょう。
実際、同記事に拠ると、
新卒大卒者の多くが一時雇いで、35歳までの平均賃金が800から1000€である。
Repubblica 2014/09/13
とのこと。
都市などにも拠りますが、入社直後の場合、ブランドショップの店員さんで1000ユーロ前後、旅行会社や貿易会社などに勤める社員で、1000ユーロ強、といったところでしょう。
また日本のように勤続年数が長くなればお給料が何倍にもなる、ということもなく、新入社員と勤続40年の社員のお給料の差はせいぜい300~400€程度というのが一般的です。
ボーナスについては、イタリア語ではTredicesimo(13番目の意)と言われるように、1か月分の給料が上乗せのボーナスとして12月に支払われます。
またイタリアの企業で働く場合、原則、交通費は自腹です。
電車、バス通勤の場合など、少ない手取りから更に定期券などを購入しなければなりません。
但し、企業や職種にも拠りますが、交通費が自腹の代わり、昼食代の補助がある場合もあります。
またイタリアの物価は、日本のそれと変わらない程度です。
実際、先日、イタリアのラジオで、ミラノで働く20代~30代前半の若者の平均月給は手取りで約1100ユーロ、一方でミラノで一人暮らしをする為に必要な費用は月約1400ユーロ、つまり生活費が月給よりも多いという、かなり厳しい現実が紹介されていました。
ではイタリアの若者はどのように生活しているのか、という話ですが、イタリアでは40歳前後になっても独身の場合は、働いていても、生活費などの為に親と同居していたり、ある程度、親に余裕がある場合は、働いていても給与だけでは十分な生活が送れないため、親からの援助を得ている場合が少なくありません。
少し話は逸れましたが、イタリアで働くということは、少ないお給料の割りには、物価がそれなりに高く、日々の生活は大変だということです。
実際、イタリアで働く日本人の場合、将来の貯金が難しいのは言うまでも無く、一時帰国の費用を捻出するのも難しいと言う人も少なくありません。
就労用滞在許可証取得までの長い道のり
給料はともかくとして、とにかくやっとイタリアでの仕事が見つかった。
ならば、仕事さえあれば、就労用滞在許可証を得ることが出来るのか?
私もイタリアでの就職活動を始める前は、勝手にそのように考えていたのですが、現実は全く事情が異なります。
年々、不況も深刻度を増し、国内の失業率もイタリア国立統計研究所ISTATに拠ると、2014年、ついに13%を超えました。
それどころか、24歳までの若年層における失業率は44%超え、つまり若者の2人に1人は仕事が無い状況です。
それに伴い、外国人の労働力流入については民意も厳しくならざるを得ず、外国人が仕事を見つけたからといって、無条件ですぐに就労用滞在許可証を得ることは出来ません。
詳細は後ほど、就労用滞在許可証の申請でお話しますが、外国人がイタリアで働く為には、1年に1度、もしくは数年に1度程度、Decreto Flussiが解禁になるまでは、就学用滞在許可証で週20時間のパートタイム労働しか出来ません。
色々問題はあるけれど、イタリアで働くメリット
これまで様々なイタリア就職のデメリットをお話ししました。
ですが、もう10年以上イタリアで実際に働いている身として、デメリットばかりだけではなく、メリットも沢山あるのが事実だと思います。
例えば個人主義の国イタリアでは、アフター・ファイブの付き合いを強制されることはまずありません。
私自身、日本では最も旧体制的な銀行勤めをしていたから特にそう感じるのかもしれませんが、イタリアの職場での同僚たちとの関係は、アフター・ファイブのお付き合いを強制されないだけでなく、上司であっても、随分と人間的、且つ個人の意思が尊重される点は、とても働きやすい環境だと思います。
また日本で会社員時代には絶対に実現不可能であった、長期休暇取得のメリットもあります。
毎月の給与明細に有給休暇の残り日数が記載されていますが、月あたり約3.2日程度の有給が付きます。
つまり1年で約40日の有給休暇が取れる、というわけです。
またこの日数は実際にお休みとして取ることが可能ですので、イタリア人の同僚も、大体夏の1ヶ月を有給で連続休暇にするのが一般的です。
後は何より、‘大好きなイタリアで生活出来る幸せ’でしょうか。
色々な問題はありますが、大好きな国で大好きな街、大好きな人、大好きな食べ物などに囲まれながら暮らす幸せは、勿論、イタリアでしか味わえないものです。