イタリアの医療制度
日本に国民健康保険制度があるように、イタリアにも同じような制度、Servizio Sanitario Nazionale(セルヴィッツィオ・サニタリオ・ナツィオナーレ)、訳してSSNが存在します。
イタリア大使館・領事館より就学ビザ申請時に、海外旅行傷害保険(留学生保険)への加入が求められる為、多くの留学生の皆さんはイタリア滞在中の万一の病気・事故などの際にはこの保険でカバーされ、SSNに加入する必要は余りないと思います。
但し専門学校への留学など、滞在が長期にわたる方にとっては、加入を検討しても良いでしょう。
SSN加入について
90日以上のイタリア国内滞在の場合(就学用滞在許可証など)、SSNへの加入の権利があります。
就労用滞在許可証での滞在の場合は、加入が義務付けられており、その費用は給与から自動的に天引きされます。
家族用滞在許可証で働いていない主婦などは、夫が仕事をしている場合、夫の扶養者としてSSNへ加入します。
就学用滞在許可証で、SSNへ加入する
費用は149€77¢で、1/1-12/31まで有効です。
ですので、滞在期間が10/1から翌年の9/30の場合も、2年分の費用全額299€54¢を納める必要があります(月割りなどはありません)。
最初の就学滞在許可証の場合は、SSN加入に際しオリジナルの提出が求められるため、滞在許可証申請の控えでは加入が出来ません。
加入は、各地方自治体のASL(Azienda Sanitaria Locale)、所謂、保健福祉事務所で行います。
SNN加入に必要な書類
- 初回の(就学用)滞在許可証の場合はオリジナル、2度目以降は、更新申請の控え
- 住民票、もしくは滞在許可証申請に登録した居住地を自己宣誓
- 税務番号、もしくは税務番号の自己宣誓
自己宣誓用の税務番号を、氏名、生年月日等を入力することで、自分で調べることが出来るサイトがあります。
SSNのシステム
SSNへ加入すると、まずは加入者全てにMedico di Base(メディコ・ディ・バーゼ)、つまり掛かりつけ医が割り当てられます。
イタリアで病気になった場合など、まずは自分の掛かりつけ医に診断を仰ぎ、更に精密検査や専門医が必要だと診断された場合は、掛かりつけ医の処方箋や紹介状を持って次のステップに進むことになります。
掛かりつけ医に掛かる費用は、SSNの保険料と税金でカバーされる為、不要ですが、診断書の発行などには費用が医師から請求がある場合もあります。
SSNへ加入することで得られる権利
- 掛かりつけ医の割り当て
- 国立病院ないし、国と提携している病院内での無料リカバリー
- 医師の診断を受ける
- 専門医の診断を受ける
- 医師の訪問診療を受ける
- ワクチンの接種
- 血液検査
- 放射線検査
- エコー検査
- 医薬品
- リハビリ
上記に挙げたものは、権利が与えられるものであって、特に無料と記載しているもの以外は、必ずしも無料で権利が与えられるものではありませんので、間違いがありませんよう。
SSNを利用して掛かる費用
例えば、最近、目の見え方がおかしいので掛かりつけ医に診てもらう場合、これは無料ですが、掛かりつけ医の判断で、専門の眼科医に診てもらう場合は、眼科医や検査の費用はTicket(チケット)といって、定められた少額を支払う必要があります。
チケットの額は、検査の種類等に拠って国で定められているもの、加えて、州に拠っては州税、さらに前年度の収入に拠って、一定額以下の年収の者はチケットのベース+州税のみ、それ以上の者には上乗せがある場合もあります。
更に専門医の診断の結果、入院して手術が必要となった場合、これを国立病院ないし、国と提携している病院内で行う場合は、無料リカバリーとなり、入院費用や手術に関わる検査費用、食事費用などは掛かりません。
医薬品については、無料のものと、そうではないものがあり、これもまた州に拠っては収入が高い者は、無料の薬でも、処方箋の発行費用のみ請求される場合もあります。
イタリアの病院は無料?
留学生の中には、保険制度などに加入していなくとも、イタリアで病院に掛かるのは無料だ、と勘違いされている方がいらっしゃるのですが、これは‘SSNに加入’しており、しかも‘国立病院ないし、国と提携している病院内でのリカバリーが必要だと診断された場合’にはじめて、無料となります。
救急救命医の友人曰く、この勘違いをしている外国人も少なくなく、医療費が無料だと思って、大して緊急性のない患者が国立病院内の救急救命室を訪れる者が後を絶たず(通常、緊急性がない場合は掛かりつけ医を、救急の場合は掛かりつけ医を通さず国立病院等の救急救命室に掛かり、そこで‘必要と判断された場合’は、無料で専門医の診断を受けられる為)、となると、本当に救急医療が必要な患者が、救急医療が必要無い患者に埋もれないとは言い切れない部分があり、大きな問題となっているそうです。
ですので、そのような緊急性の無い患者には、次回以降、本当に救急救命室が必要だと感じる症状以外は掛かりつけ医に掛かること、また‘国立病院ないし、国と提携している病院内でのリカバリー’が必要ではない為、救急医療診療費としてチケットの支払いを請求している、とのこと。