日本とイタリアの年金制度

留学中の国民年金について

節約イタリア留学中の、日本の国民年金保険料支払いは、住民票を抜けば、支払い義務はありません。

但し当然ながら、将来の支給額が減ることになります。

支給額を減らしたくない場合は、住民票を抜いても、任意で国民年金を納めることが出来ます。

その為には事前に、最後の住民票があった住所を管轄する税務署で、手続きを行う必要があります。

実際、私も任意で国民年金を納め続けていますが、納付額・将来の支給額等は、日本に住所を置き、国民年金を納付している日本国民と全く変わりません。

また任意でも、付加を付けたり、1年、2年前納や、クレジット・カード払い等も可能です。

日本とイタリア間の年金制度協定

外国で長期滞在する方の中には、日本と海外の2カ国で年金を納めている場合が少なくありません。

また日本以外の他国の年金制度でも、受給資格の一つとして、一定期間以上の加入を求めている場合が多いものの、外国での納付期間が条件を満たさず、保険料が掛け捨てになる場合もあること。

これらのことから、日本と多くの国が、保険期間の通算などを目的とした協定を発効しています。

日本とイタリアは、2009年に社会保障協定に署名したものの、それ以降、残念ながら、この件についての進展は無く、発効には至っていません。

ですので、イタリアで働く日本人の場合、現時点では、イタリアの年金保険料は給与天引きか、自営業の方も支払いが義務付けられている為、イタリアで年金保険料を納めた上に、日本で最低納付期間を満たしていなければこれまで納めた保険料を諦めるか、任意で日本の年金保険料を払い続けるか、の選択になります。

私自身は、20歳の頃から年金には付加を掛けており、納めた年数も長いので、日本での国民年金保険料も2年前納で納め続けています。

また日本の税務署に問い合わせたところ、日本とイタリアの両国で年金保険料を納め続け、将来的に両国で受給資格を満たした場合、その時点で協定が発効されていたとしても、どちらかの年金が減額になるようなことはない、つまり両国から満額の年金が受け取れる、とのこと。

イタリアの年金制度

イタリアの年金制度は、Istituto nazionale della previdenza sociale、略してINPSと呼ばれます。

イタリアで滞在許可証を所持し、正規で働く外国人は、イタリア人と全く同様の年金制度に関する義務・権利を持ちます。

イタリア年金制度の概要

保険料徴収
被用者, 自営業者は強制 無職は非加入
最低納付期間
20年以上
納付保険料
被用者は、所得額の平均9,19% 自営業者は最低671€39¢以上/3ヶ月
支給開始年齢
2013年より66歳3ヶ月
受給額平均
11482€/年(957€/月)
受給最低額
8728€395¢/年(727€/月)

INPSの加入は、被用者、自営業者に関わらず、イタリアで働く者は全員が加入を義務付けられています。

被用者は毎月の給与より天引きに、自営業者は年に4回に分けて納付します。

日本の年金制度と異なり、無職の場合は年金保険料の支払いは不要ですが、結果、INPSへは非加入となり、将来に渡っても、年金受給資格もありません。

専業主婦と年金

日本では、会社員や公務員に養われている配偶者、つまり専業主婦(多少のパート収入があるが、年金保険料を納めていない者を含む)、第3号被保険者も、条件を満たせば、年金を受け取ることが出来ます。

一方でイタリアの年金制度では、専業主婦は年金保険料の納付義務はありませんが、INPSへは非加入となり、この場合も将来、年金受給資格はありません。

INPSへの任意加入

無職、専業主婦の場合、年金保険料の納付義務はありませんが、年金受給資格も無い為、一定の条件を満たす場合は、任意でINPSへ年金保険料を納めることで、将来、年金を受給することも可能です。

INPSへ任意加入出来る条件

  • 過去に被用者、もしくは自営業者として、最低でも5年以上(必ずしも連続する必要はない)、年金保険料を納付済みであること。
  • もしくは、任意加入日から遡って5年間の間に、最低でも3年以上、年金保険料を納付済みであること。

支給開始年齢

2013年より、これまでの年金支給開始年齢66歳から、66歳3ヶ月に引き上げられました。

また2021年には、改めて67歳への引き上げが決定しています。

支給開始年齢の繰り上げ

イタリアでも、67歳よりも前、繰り上げで早めに年金を受給することも可能です。

但しその場合の条件として、男性で最低42年6ヶ月以上、女性は最低41年6ヶ月以上の保険料納付期間が必要です。

更に繰り上げの減額率は、支給開始年齢に足りない年数ごとに1%ですが、更に62歳未満の場合は、年ごとに2%の減額が行われます。

年金保険料納付

被用者は、毎月の給与から自動的に天引きされます。

自営業者は5,8,11,2月のそれぞれ16日の、1年4回に分けて、年金保険料を納めます。

年金受給額

年金受給条件を満たす者の、最低受給年金額は、Assegno sociale(65歳3ヶ月以上の条件を満たす生活困窮者が受給できる生活保護の類)の1.5倍以上であることが法律で保証されています。

Assegno socialeの支給最高額は、毎年の物価上昇率等を考慮した上で計算されますが、2014年度実績で、年間5818€93¢であった為、年金受給者の最低保証額は、年間8728€395¢以上が保証されていたことになります。

遺族年金

法律に基づき、死亡した被保険者が有年金受給資格者であった場合に、残された遺族に対して支給されるもので、以下が、遺族年金の有資格者に該当します。

イタリア語で、Pensione di reversibilitàと言います。

配偶者

配偶者
条件なし。
別居した配偶者
別居の判決が出る前までに、亡くなった直接年金受給資格者がINPSに加入し、尚且つ、別居の原因が同じく直接年金受給資格者側にある判決が出ており、更に扶助料(assegno alimentare)の資格者であった別居した配偶者。
離婚した配偶者
離婚手当(assegno di divorzio)が判決で認められた者で、新たな結婚をしていない離婚した配偶者、もしくは亡くなった直接年金受給資格者が再婚していた場合、離婚した配偶者と現在の配偶者間の配分は、判事に拠って定められます。

イタリアでの別居・離婚に関するページもご一読下さい。

18歳未満の子
条件なし。
21歳までの子
21歳までの中・高校生で、亡くなった年金資格者の扶養者であった者、尚且つ、働いていない者。
26歳までの子
26歳までの大学生で、亡くなった年金資格者の扶養者であった者、尚且つ、働いていない者。
ハンディキャップを持つ子
年齢に関係なく、亡くなった年金資格者の扶養者であったハンディーキャップを持つ者。

その他、亡くなった年金資格者の、未婚の兄弟で働くことが出来ない者、老齢年金の受給資格が無い両親なども、遺族年金の受給資格者となる場合がありますが、今回は一般的な例として、配偶者と子の遺族年金について、説明しました。

遺族年金の受給額

亡くなった直接年金受給者が受け取るべき額のうち、下記に定められた額が遺族年金受給資格者に給付されます。

ちなみに子供とは、前述の条件を満たす子供に限定され、条件を満たす子供が居ない場合は、配偶者のみ分の給付となります。

配偶者のみ
60%
配偶者+子供1人
80%
配偶者+子供2人以上
100%

遺族年金の減額制度

国が定める年金受給最低額3倍以上の収入(年収約26000€以上)がある者については、25%の遺族年金減額が実施されます。

他、収入額に拠って最大で50%までの減額が実施されます。

が、未成年の子供、学生、ハンディーキャップがある者が核家族内に居る場合、減額は実施されません。

イタリアの年金制度を知る

今回、イタリア年金制度の概要をまとめましたが、詳細については、イタリア年金制度本体INPSのサイトに大変詳しく説明があります。

イタリアで長く生活している方などは、一度、目を通してみると良いでしょう。

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