イタリアで妊娠・出産
イタリアで妊娠が判明した場合、まずは掛かり付け医(medico di base)に相談しましょう。
就学用滞在許可証期間中の妊娠で、掛かり付け医が居ない場合は、まずはイタリアの医療制度SSN(Servizio Sanitario Nazionale)に加入し、掛かりつけ医を選択します。
掛かり付け医が処方箋を準備するので、ASL(Assistenza sanitaria locale, 地方保健局)のCUP(Centro unico di prenotazione)で、産科医の初診と、妊婦の為の各種血液・尿・超音波検査の予約を入れます。
妊婦健診
受精から(イタリア式の)13週目まで
- 血球算定
- 血液型検査(それまでに検査経験が無い場合)
- アスパラギン酸アミノ基転移酵素(肝機能)
- アラニンアミノトランスフェラーゼ(肝機能)
- 風疹ウィルス
- トキソプラズマ
- 梅毒トレポネーマ抗体
- HIV
- グルコース(血糖値)
- クームス検査(不規則抗体)
- 超音波検査
- 尿検査
14-18週
- 尿検査
19-23週
- 超音波
- 尿検査
24-27週
- グルコース
- 尿検査
28-32週
- 血球算定
- 血清フェリチン(貧血)
- 尿検査
- 超音波
33-37週
- B型肝炎
- C型肝炎
- 尿検査
- 血球算定
38-40週
- 尿検査
41週以降
- 超音波
- 心電図(必要な場合)
以上、外国人も、イタリア人妊婦と同様のサポートを受けることが出来ます。
上記期間中に、公立の病院、もしくはSSN提携病院ないし施設で該当の検査を受ける場合は、無料となります(期間外だと有料)。
但し、比較的大きな都市などでは、かなり前もって(数ヶ月)予約を入れなければ、空き枠が無く、期間内に検査を受けられない(期間外は有料)ことも少なくない為、妊娠判明後、まずは早急に掛かり付け医に相談し、早めに予約を取りましょう。
上記以外にも、産科医が必要と判断した場合は、追加の検査等が無料で行われることがあります。
例えば、妊婦が35歳以上の場合や、超音波検査で胎児に異常が見られる場合などは、羊水検査(amniocentesi)や絨毛検査(villocentesi)を受ける権利(受ける・受けないの選択も勿論可)も無料で与えられます。
産科医の初診では、通常、妊婦やパートナーとその家族の既在症や、病歴などをたずねられます。
その他、内診、妊婦の体重測定と血圧検査、胎児の心拍の確認等が行われます。
以降、産婦人科医のもとの妊婦検診は、特に問題が無いようであれば、以降は34週目まで毎月、34週目以降は毎週、無料で受診することが可能です。
イタリア式妊娠週数の数え方
日本では、最終月経初日を0週と数えますが、イタリアでは最終月経初日から1週と数えます。
妊婦とトキソプラズマ
トキソプラズマとは、寄生虫の一種で、生肉(生ハム、サラミ...)や加熱が十分ではない肉(レア・ステーキ...)、猫の糞、もしくは猫の糞が混ざった土などを介し、人間に感染します。
健康な大人であれば、トキソプラズマに感染しても重篤な症状が出ることは殆どありませんが、妊婦にトキソプラズマの抗体が無いまま、妊娠中にトキソプラズマに感染すると、胎児にも感染する可能性があり、脳症、水頭症を起こすなど、重大な影響を与える場合があります。
日本人の抗体陽性率は10%程度であるものの、生肉を食べる習慣が多いイタリアでは、約50%が陽性だと言われています。
しばしばイタリアで、妊婦が生ハム・サラミなどを食べてはいけないと言われているのはこの為で、実際には、妊娠初期段階でトキソプラズマ抗体検査を受け、陽性であれば、胎児が感染して先天性トキソプラズマ症を起こすことはなく、生物・土いじりなども心配する必要はないはずですが、産科医に十分にご相談下さい。
陰性の場合は、土を触る際は手袋を使用する、野菜はしっかり重曹を使って洗う、生物は口に入れず、加熱したものを食す、などの注意が必要です。
母親・父親学級
Corso prepartoなどと言い、公立・市立の病院や、Consultorio Familiareで受講することが出来ます。
Consultorio Familiareとは、直訳すると家族カウンセリング・センターですが、婦人科医、産科医、精神科医、看護師などが、妊婦や妊娠を希望する女性とそのパートナーの妊娠・出産に関わる知識向上やカウンセリング、女性特有の病気を予防するための知識向上や検査(子宮頸がん検査)などを行う、法律で定められた施設で、各地方自治体ごとに設置があります。
イタリア各地のConsultorio Familiareリスト
母親・父親学級は、通常、7-9ヶ月の妊婦とそのパートナーに向けて、8-10回前後、行われます。
内容は、体調管理、出産までの流れ、安産体操、呼吸法、母乳育児、新生児に必要なお世話など、特に初産婦にとっては為になることを数多く学ぶことが出来ます。
市立病院でのコースは、参加者の全額負担ですが、公立病院やConsultorioで実施されるコースは、通常、無料ないし、僅かな負担(Ticket)だけで、参加することが出来ます。
ですが無料ないし低料金のコースは、かなり早い段階で予約を入れないと、満席の場合もありますので、注意しましょう。
自然分娩と帝王切開
日本で生まれてくる赤ん坊の約20%が、帝王切開によって生を受けます。
一方、イタリアはヨーロッパで最も帝王切開による出産率が高い国で、全国平均で38%、特に南部に至っては、カンパーニャ州で62%、シチリアでは51%と、半数を超える女性が帝王切開によって出産していることになります。
その割合の多さから、イタリアでは必ずしもそれを行う必要がない妊婦までもが、帝王切開による出産を行っている、と言われています。
その理由は、国立病院で救急救命医として働いている友人の話でも、病院側で出産の時間的計画を立てやすいことに加え、帝王切開の場合は外科手術になるので、国から病院に入ってくる手当もその分多くなるから、というのが理由だそうです。
勿論、その時になって、妊婦や胎児の置かれた状況に拠り、緊急帝王切開手術が最適な方法となる場合もあるでしょうが、妊婦側でも各自、お世話になる病院での、自然分娩と帝王世界による出産の割合を確認したり、また産科医ともこの件についてよく話し合ってみるなどは、事前に必要かもしれません。
またイタリアでは、自然分娩による出産の場合、出産から3・4日、帝王切開による出産の場合は、同じく6日後に、退院となるのが一般的です。
勿論、母体や新生児の状況に拠っては、これに限りません。